新・男尊女卑
体験記

来るもの拒まず去るもの追わず

私のスタイルは「来るもの拒まず去るもの追わず」だ。

以前、マンションの宅配ポストが故障してAmazonからの荷物が取り出せないというちょっとした事件が起きた。すぐに必要なものでもなく、こちらに責任があるわけでもないので数日間放っておくと、案の定管理会社から電話連絡が入った。

「荷物を預かっていますので弊社まで取りに来ていただけますか?」

次の休日、時間もあったので管理会社に取りに行くことにした。
扉を開けるとそこは受付電話のみが置かれているエントランスだった。締め切られた空間でエアコンの風が入りこまず、少し蒸し暑い。

受話器を取ると受付の女性の声である。

「預けている荷物を取りに来た◯◯という者です」
「マンション名を教えていただけますか?」
「△△です」
「△△の◯◯さんですね。少々お待ちください」

荷物を持って現れたのは、ややぽっちゃり気味の真面目そうな30歳前後の女性だ。書類のサインが必要らしく、名前と電話番号を書かされた。

書いている間、エントランスには私とその女性の2人きりである。

書き終えた書類を渡すと、「身分証はお持ちですか?」と聞かれたので、免許証を渡した。記入内容と整合しているかの確認だろう。わかる。

「コピーを取らせていただきますので少々お待ちください」
「はい、わかりました」

わかりましたと言ったものの、「ここ暑いから早くしてほしいな」と思った。
女性は私の免許証を持って中に入ろうとした瞬間立ち止まり、こちらを振り返った。

「よかったなら中で待たれますか?」

エントランスが暑いことを察して言ってくれたのだろう。ありがとう、助かる。だけどそれなら書類も中で書かせてよ。暑いじゃんここ。段取り悪くない?などと頭の中で突っ込んでいたらつい笑ってしまった。

「プッw。わかりました、ありがとうございます。笑」

と吹き出したように言うと、その女性も自分の段取りの悪さに気づいてか、私につられて笑った。

「すみません、先言えば良かったですね。笑」
「いえいえ大丈夫ですよ」

来客室に案内されるとそれはそれは素晴らしくエアコンが効いており、それはそれは素晴らしく書類が書きやすそうなテーブルと椅子があった。だったら最初からここでいいだろ。
ほどなくして手続きが終わり、身分証と荷物を受け取り、笑顔でお礼を言ってその場を後にした。

これが、女との出会いの原型となる。

以降、彼女とは特段何もない。
しかし、彼女が望めばなんらかのサインを出してくる。そのサインに応える形で連絡先を交換したり食事に誘ったりしていけば、自然とゴールに辿り着く。

彼女が出会いに飢えていたり、私に魅了されていたりする場合は、なんやかんや理由をつけて偶然を装って私に会う状況を自分から作りにくる。私はただそのきっかけを作ったに過ぎない。

もちろん、何も起きないことのほうが多い。今回もそうだろう。期待なんて全くしていない。しかし、こうして普段から種を蒔いておけば、デートのスケジュールなどすぐに埋まるのである。